体中に張り巡らされた血管の長さは10万Kmにも及びます。その血管の中を休むことなく流れ続ける血液が、一瞬でも滞ることになれば、私たちの身体には深刻な問題が発生します。
とは言っても、血液検査で注射針を刺されるときくらいしか、血管を意識することは殆どありませんよね。
しかし、血管は私たちの健康を左右する、とっても重要な臓器なのです。この機会に、血管のことをじっくり考えてみましょう。
血管は単なる血液の通り道ではない、生きて活動する路線網
血管が血液の流れを調整している
心臓から送り出された血液は、血管を通って体全体を循環し、約50~60秒後に再び戻ってきます。血液は酸素と栄養素を届け、老廃物を回収して戻ってくるのですが、この血液循環の速さは一定に保たれています。
激しい運動をして心臓がバクバクしていても、ぐっすり眠っているときにも、血液の循環速度は一定に保たれています。
なぜ、循環速度が一定に保たれているかというと、血管が調節しているからなのです。血管がそのような働きをするためには、血管が体中のあらゆる臓器や神経組織などと連携し、その状態を正しく認識していなければなりません。
例えば、寝ている状態から立ち上がった時には、下半身の血管が窄まり、血液を押し上げるので、下半身に血液がたまらないようになっています。
また、緊張した時には血管が収縮するので血圧が上がり、ストレスから解放された時に血管が緩むので、血圧は下がります。
この様なことが、常に瞬時に対応できているのですから、血管はビニールホースのような単なる管ではない、生きた生命の通り道なのです。
血管の種類と役割
血管は身体に張り巡らされている交通路のようなものです。
高速道路に相当するのは、大動脈や大静脈などの太い血管です。急いでモノを運ぶにはこの高速道路を利用するのがいちばんですが、高速道路は個々の家々までは走っていませんね。
細胞という目的地へ向かうには、国道や県道などの幹線道路を抜け、最後はどうしても、細い路地を進まなければなりません。身体の中で国道や県道に相当するのは、動脈と静脈、もしくは細動脈や細静脈です。
細い路地にあたるのは毛細血管。血液と細胞の間の物質のやりとりはすべて、この毛細血管を介して行われます。
道路ついでにたとえると、動脈は「下り路線」、静脈は「上り路線」ということもできます。この場合、起点となるのは心臓です。
下りの毛細血管では、運んで来た酸素と栄養素を荷下ろしし、個々の細胞へと届けています。反対側、上りの毛細血管では、細胞が出したゴミ(二酸化炭素や老廃物)を受け取り、心臓へ戻ろうとしています。トラックは同じでも、下りは運送業者、上りはゴミ収集車に変身するような感じです。
動脈は、心臓から出た血液を末梢にまで運ぶ役割を果たしており、常に拍動性の血流と血圧にさらされています。そのため、動脈の中膜は平滑筋と弾性線維によって厚みがあり、伸縮性と弾力性があります。また、血管内部の圧が減っても丸い形が保てるようになっています。
これに対して静脈では、毛細血管を通過した血液が常に一定の量と速度で、後から来る血液に押されて流れます。静脈は血管が伸縮する必要がないため、中膜の平滑筋が少なく、弾力性に乏しいのが特徴です。血管壁は薄く、皮膚の表面にある静脈は指で圧迫することで血流を止めることができます。
血管の99%は毛細血管、毛細血管こそが生命活動の最前線
毛細血管の働き
毛細血管は動脈と静脈をつなぐ極細の血管で、血管の99%を占めています。毛細血管は、全身のあらゆる細胞のすぐそばに存在し、細胞が必要とする栄養素を届ける、いわば宅配便のような役割を担っています。
さらに、体の働きを調節するホルモンや、病原菌や異物の侵入を防ぐ白血球などの免疫細胞を運ぶ役目も果たしています。また、皮膚に近いところの毛細血管が拡張・収縮することで熱の出入りを調整し、体温が一定に保たれているのです。
毛細血管は加齢と共に減少する
最新研究で分かってきた驚きの新事実。それは“毛細血管は年齢と共に減っていく”ということです。
皮膚の毛細血管を調査した研究では、60~70代の人は20代に比べて、毛細血管が4割も減少しているというのです。
皮膚に酸素や栄養が届かなければ、シミ・シワなどお肌のトラブルの一因になります。また、肝臓や肺など、臓器の毛細血管が減れば、様々な機能低下や病気が起こる可能性もあります。年をとるほどお酒が弱くなったりするのは、毛細血管の減少が要因のひとつと考えられるようになっています。
毛細血管の劣化、侮ってはいけません!
毛細血管力アップにより以下のことが期待できること
① 若々しくなる
肌や毛髪の新陳代謝にも、毛細血管がかかわっています。毛細血管を通じて届けられた栄養素が、新しい皮膚や毛髪、頭皮を作ってくれます。
② 病気を防ぐ
糖尿病の合併症(腎障害、網膜症、神経障害)は全て毛細血管の病気です。
③ 冷え性改善
全身を巡っている血液には体温調節の役割があります。
④ 免疫力アップ
白血球やリンパ球などの免疫物質が、ウイルスや細菌、ガン細胞などを抑えるために、血液中を流れています。
ありがたいことに、毛細血管は何歳になっても増やすことができます。血管新生といって、ダメージを受けても修復し、枝分かれするように新たな毛細血管が育ち、定着していくのです。
同じ年齢であっても、毛細血管の量には個人差があり、多い人は見た目も若々しく、病気のリスクも低い。加齢による減少を最小限に食い止め、健康な毛細血管を増やすことはアンチエイジングにもつながり、健康寿命を延ばす近道といえます。
毛細血管を増せば若さと健康を増進できる!
こうやって血管は元気になる
①血流を増やすこと
毛細血管自身も血液で養われています。毛細血管に血液がしっかり流れることで、細胞同士がきちんとくっついて、血管もきれいに保たれるのです。
②血管を緩めること
毛細血管は自律神経の指令によって収縮と拡張を切り替えています。交感神経が優位になると、毛細血管の入り口にある筋肉がキュッと収縮して毛細血管の血流が抑えられてしまいます。逆に、副交感神経が優位になると毛細血管の筋肉が緩み、末梢まで血が巡ります。
ですから、毛細血管にしっかり血液が流れるようにするためには、意識的に副交感神経が優位なリラックスした状態を作ることが大切です。
③質のいい睡眠をしっかりとること
血管を緩める時間を長く保つためには、質の良い睡眠が必要です。睡眠中は、副交感神経優位の時間をまとまってとることができます。
毛細血管を若返らせ、増やすことができれば体も若々しく元気になります。見えないけれど頑張っている血管、是非大事にしてください!