筋肉は、体全体の健康に大きく関わってきます。若いうちから筋肉を落とさないことが大切であり、いま運動しておくことが未来の健康にもつながります。今回はその重要性と対処法をご紹介します。
50代からは筋肉を鍛えることが重要
「老いない体」の作り方(満尾正博士著)によれば、50代からは筋肉を鍛えることが重要!と言われています。
年をとると筋肉が目に見えて衰えていきます。とりわけ50代以降は、筋肉とかかわりのある男性ホルモンが減少し、それに伴って筋肉が衰えやすく、量が減っていきます。
寝たきりや要介護にならずに健康寿命を延ばすためには、50代から骨や筋肉の機能維持・向上に努める必要があります。特に下肢の筋肉が健康寿命を大きく左右します。
また、筋肉を強化・維持することは、そのまま免疫力の増強・維持に繋がります。
筋肉は使わないと減少していく
私たちの筋肉量は30代以降、年1%ずつ減り続けています。筋トレなどの運動をしなければ、10年先で10%、20年先で20%、30年先には30%の筋肉が減るのです。
加齢にともない筋肉量は40歳くらいから急激に低下しますが、下肢の低下率は上肢に比べ3倍大きいことが解っています。老化は足からと言われますが、その通りです。また筋肉を構成する筋繊維でみると、その数は20歳代に比べ80歳代で半減します。
そうなると、ちょっとしたことで疲れてしまうだけでなく、体が思うように動かなくなったり、腰やひざが痛んだりします。ですから、自分の未来を明るいものにしたいなら、いまのうちに筋肉をつけておくことが絶対です。
筋肉には瞬発力に関わる筋肉である速筋繊維と、持久力に関わる筋肉である遅筋繊維があります。両者を比較すると、繊維の数は加齢とともに同じように減少しますが、1本の繊維の太さでは速筋繊維がより年齢の影響を受け、80歳代は20歳代に比べ約3割細くなっています。
若者では素早く力を発揮できますが、高齢者ではゆっくりとしか力を出すことができないのはそのためです。筋繊維のこのような変化は、繊維と繊維の隙間を広げ、ここに間質液という体液が溜まってむくみを生じさせ、ますます力を発揮しにくいもろい筋肉になっていくのです。
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筋肉量低下の問題
筋肉量の低下によってもたらされる現象
加齢に伴ってもろく弱くなった筋肉をサルコペニアと言います。高齢者が転倒して骨折したり、寝たきりになるなど、要介護の背景になっています。そのため、ヨーロッパ老年医学会は、サルコペニアを老年症候群と位置づけ、低筋肉量や、握力、歩行速度の低下などを診断基準の一つとして治療方針を示そうとしています。
キレイな姿勢を維持するためにも筋肉は不可欠です。特に腰から太ももの付け根部分に位置する「腸腰筋(ちょうようきん)」が衰えてしまうと、歩行時につまずいたり、背筋の伸びた姿勢が保てなくなったりして、見た目からも若々しさが失われていきます。
顔の表情を支える「表情筋」などが衰えてくると、皮膚の表面がしわとなり、ほうれい線となって現れるようになります。
腸内環境を整えるために、適度な運動が必要なわけ
腸内環境を整える上でも大切なのが適度な運動です。なぜなら、身体を動かすことで血流が促進され、腸の動きもよくなるからです。
腸がしっかり機能せずに便秘になると、お腹にたまったガスが毒素となって全身を巡り、肌荒れなどに繋がるだけでなく、時には肩こりや頭痛の原因にもなります。ガスがたまって身体が重くなると、身体を動かすことが減って便秘になるといった悪循環に陥るケースもありますから注意してください。
下肢の筋肉が衰えているかどうかのチェック
□ 歩くのが遅くなった
□ 歩幅が狭くなった
□ 移動に車ばかり使う
□ 電車では躊躇わずに座る
□ 階段より、エスカレーターやエレベーターをすぐに使う
□ 家ではソファーなどに寝転がることが多い
この中のどれか一つでも当てはまる様なら、要注意です。
一日の運動量は健康度と密接につながっている
筋力アップの効果
ジョギングなどのリズム運動を行うことで脳内の元気ホルモンであるセロトニンの分泌が促されたり、筋トレによって別名“モテホルモン”とも呼ばれる男性ホルモン・テストステロンの分泌が促されたりと、ポジティブになるための物質が生成されることは多くの研究で明らかになっている。肉体的にだけではなく、“心”の健康寿命まで延ばしてくれるとなれば、良いことしかないだろう。
効果的なインターバルウオーキング
体を若返らせ、健康長寿を延ばす最高のエクササイズで、早歩きとゆっくり歩きを交互に繰り返す運動です。歩幅を広げ、軽くひじをまげて前後に大きく振り、早歩きで1分間、歩幅を戻し、3分間ゆっくり歩く。これを3~4セット繰り返し、汗が額にうっすらと浮かぶ程度の運動量で十分です。
アメリカのハーバード大学の卒業生、約1万7千人を10年以上にわたって追跡調査した結果、ある程度以上運動を続けていたグループは、あまり運動をしなかったグループに比べて、大腸がんの発生リスクが2分の1になったと報告しています。
また、群馬県の中之条町の住民を対象とした「中之条スタディ」の分析によると、腸のがんのリスクが減る目安は1日7千歩(そのうち15分は早歩き)で、細切れの運動で良いというものでした。
お勧めの時間帯は夕方です。血液が濃くなっている起床直後は避けた方が健康的です。
楽しく楽に痩せられるスロージョギング
笑顔が保てる程度の軽い運動を継続すると、効果的に痩せられるということが科学的に実証されています。
スロージョギングはその名の通り、ゆっくり走る運動です。歩くのと同程度かちょっと早いくらい、人と会話できるくらいのスローペースです。
歩くのと同じくらいの速さでも、消費カロリーは2倍になります。歩くときは、片足が地面につきますが、スロージョギングでは両足が一瞬、宙に浮くのでより大きな筋肉を使うためです。
はじめは1日10分から始めて、20分、30分くらいまで伸ばし、週3回できたら十分に効果を実感できることでしょう。
脂肪が燃えやすくなり、太らない。生活習慣病を予防、改善する。脳が活性化するなどの効果が得られます。
筋トレで若返りホルモンを獲得する
若返りホルモンが分泌されると、筋肉はもちろん若返るし、血糖値も低下、脂肪も分解され、認知症予防にも効果があるとの報告もあります。若返りホルモンの効果は、次のとおりです。
・筋力や骨力の向上
・抗炎症性の向上
・脂肪細胞での脂肪分解
・血糖代謝・認知機能・動脈硬化の改善
・免疫力アップ
・美肌効果
若返りホルモンどこで作られるかというと筋肉です。どこの筋肉からでも生まれるのでしょうか。よくよく調べてみると、下半身の筋肉、とくに太ももやふくらはぎの筋肉から分泌されやすいと言われています。
太ももとふくらはぎのソフト筋トレとしては、簡単スクワット+かかと上げ下ろしの組み合わせがよいでしょう。もう少しできるとしたら、もも上げ足踏みを追加します。
簡単スクワットもかかと上げ下ろしも、もも上げ足踏みも、いつでもどこでも可能だし、道具も不要。通勤途上でも帰宅途上でも、お買い物途上でも、実行可能です。
無理なく、「可能な運動を、可能な時間帯に、可能な限り多く」です。